すでにお知らせしてあるとおり、広報調査委員会では、今年度、単に各種イベントなどの報告をするだけでなく、いくつかのテーマについて「調査」して報告することにした。緒方広報調査委員による「新会計基準報告」が第一回の調査レポートであった。
今回は、なにかとよく耳にするが、実態が判然としない「第三者評価システム」についてレポートしたい。折よく、先の全私保・宮崎大会では、厚生労働省担当者の話を聞くことができたので、こちらでの情報も織り込みながら報告したい。
担当者:小峰弘明氏(厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課・保育指導専門官)
誰か知らないが園に来て、いろいろ見て、「ここはいい、悪い、改善してね」という調査なんだろうか?
ぶっちゃけた話、その通りなのである。しかも結果の公表が大前提。しかしそれだとあんまりなので、このシステムもう少しそれらしくしてある。
今回ざっとみた限りでは、なんだかそんなに悪くないシステムみたいなのである。
まあ、下に少し調べましたので、判断は読んだ方それぞれにおまかせしますが。
では、まず、なんでこのシステムの導入が必要とされたのか。まず、本システムの目的を見てみよう。
目的:
- 各事業者によるサービスの質の向上に係る取り組みを促進する。
- 利用者が保育内容を十分把握できるようにする。
の2点なのである。超うがったみかたしますとね「おまえら、これまで、無茶苦茶、閉鎖的で保育の質も悪くってしょうがないから、もうちょっときちんとできるように、このシステムでビシバシ評価するけんね!」という目的なんだろうね。ま、目的はそんなところ。
これに合わさって出てくるのが、この事業の定義(何をするのか)ということなんですが。これはね:
「事業者の提供するサービスの質を当事者(事業者および利用者)以外の公正・中立な第三者機関が、専門的かつ客観的な立場から評価する事業」
ということなんですね。
さて、この定義を読んでるとね、いろんな疑問が浮かんできません?
- サービスの質をどのように調べてゆくのか。どんな方法でやるんだろう。その方法は本当にいいの?
- 公正かつ中立ていうけど、本当にそうなの。それをどういう方法で証明してくれるだろう。もう公正・中立でなかった時、調査者への処罰はあるの?
- 専門的立場って言いますけど、その専門性ってなんなんだ。保育園知らない人が来ても、わからないだろうに。
この辺の疑問はまた後で煮詰めたいと思います。
今のところ、義務ではない。申し込みをして、20万円払ってお願いするっていうものです。だけど、実際どうなのか。もう一回超うがった見方をすると、申込みしたところはそれだけで評価高いよ〜 申しこみしなかったところはふふふだよ〜なのかもしれない。今後、調査者の育成に力を入れて数年後には数百人程度にしたいとの担当者の説明もあり、まあ、これってほとんど義務化するでしょうという感じです。
今回担当者からの話を聞いて、しかけ人の当事者たちが暗中模索という感じがします。 だってこんなことを言ってますから:
「公正中立な機関とは?様々な手法があるが、今後も検討の課題である。
専門的客観的な立場が必要。
評価調査者というのも難しい。
保育内容を見て、評価の原案を作る。
調査者が重要になってくる。どのような立場で評価の原案をつくるのか、、」
目下考え中というのである。
ただし、それだけじゃあんまり具体性がないというので、「保育士養成校の研究者と保育所の施設長(経験者)などがチームを組んで評価調査者となり、保育所などの実地調査を行う」ということも進められている。 また、この人たちが、今後何年間の評価基準などに関する研究を深めつつ、第三者評価のノウハウを蓄積する」という具体的な見通しもあることはある。
第三者評価システムというのは、保育園だけじゃなくて福祉サービス全般に適用するべくつくられたんだけど、では、現在(平成14年10月)保育園に対して、どの程度実施されているんだろうか?
「ほとんど無い」がファイナルアンサー。「都道府県で6件、 政令指定都市で4件」程度なのだ。
で、もっとどど〜んとやってほしいので、来年度の予算要求で、都道府県で実施など検討しているところには立ち上げ経費(15億X3年間)でサポートすることを検討中とのことなのだ。
ただし対象は保育園だけではないので、そこらへんは都道府県の考え方次第となるらしい。
保育園を実際やっている者にとっては、ここが一番気になるところですね。
基本的に「保育指針で示された基準に沿って評価基準をつくっておいて」やりますということらしいが、さらに、利用者がどう思ってるのかも調査されるらしい。「直接利用者の声を聞いて、把握した上で、やるべきという意見がでてきたので、このようになった。アンケートおよびヒアリングを実施してこれを把握してゆく」とのことなのだ。
保育内容について評価基準の設問については、保育内容そのものになるので、総合的に網羅するような形式になっているとのことだ。具体的な方向性は:
- 様々な方向性をも持つ保育を52項目で評価できるのかという批判があった。評価調査者が、特記事項で書く欄があり、言葉で総合所見として文章で書くようになっている。ここで評価してゆきたい。
- 結果が出て、ある園のこれからの課題などが明らかになった場合、事業者が自由に意見を書く部分が用意されている。公正な立場でやるということだ。
まあ、今の保育指針に基づいて評価してゆきますということで、これには納得できるところもある。
それも、実際やってみて、いろんな人の意見を聞いて、よりよくしてゆこうという流れなので、それは、いいのじゃないかと思う
はしょってみると次のようになる。
- 園の自己評価+利用者評価(利用者にアンケートに答えてもらう)
- (1)で得たデータを評価調査者が検討する→
- 評価調査者が園を訪問(3人が1日かける)
- 評価決定委員会で評価を出す
- 評価結果データが園に送られてくる→
- このデータを公表
面白いのは、園利用者にアンケートを送り、回答を直接、調査者に利用者が返信するところだ。
また、調査者は一回の調査につき3名があたることになっているようだ。また、最終的な評価を出すグループが評価決定委員会となっている。
これには関係団体や学識経験者がからんでくるようだ。こうやって見てみると、できるだけ客観的に評価できるよう工夫がこらしてあるのがよく分かる。ここだけ見ると、まんざら悪いシステムではなさそうなのである。
それでも、利用者のアンケート内容がどのようなものになるのか、3人X1日だけの調査で十分なのかなど疑問は残る。
一番気になるのがやはり、評価調査者ですよね。さきほども言ったように、全国保育士養成協議会が中心となって、調査者を養成してゆくということなんだが、それだけじゃなくて、試験で調査者としての「資質」をチェックしてほしいなどの声もあって、「(必要条件として)児童福祉の経験がある人(5年以上)に任命する」ということになった。
担当者によると「今年、6〜11月で養成研修があったが。4ヶ所850人が受講した。 現在、この中から保養協の調査者名簿に載せる予定で、現在120〜130の名簿ができている。最初は、200人ほど養成したい。養成が終わってもフォローアップの研修が重要である」とのこと。
だけど、評価内容は調査者によって変わってくると思うけど、一定の研修を修了すれば、だれでも調査官になれるのだろうか==という疑問も出てくる。
これについて、担当者は、「年齢、学識経験などついてもいろんな意見があったが、ある程度の人数を養成しなくてはならない要求もあり、しかも調査対象は全国である。保育園経験5年以上で、だれでもなれるものである。もちろん3日間の養成研修が必要となる。ただし修了者でもフォローアップ研修が必要とされる。誰しもそれぞれに「保育観」が違ってくる。極力、個々の保育観をもとに、自分の尺度で評価を実施しないように、どのように客観的にできるかが課題となる。また、調査官の倫理規定も考慮し作成している。調査者と園の特定の関係を作ることはバイアスになるので、これはいけない。彼らの倫理徹底が必要不可欠であり、倫理研修を実施せよとの声もある。現在、そのあたりの基準について討議に終始している状態である」==と言っている。
また、調査者3人の見解が、それぞれの保育観から離れすぎないように、「評価マニュアル」を作成中とのことである。話を聞いていると、当事者たちも調査者の育成には、ずいぶん腐心しているようだ。
担当者によると、今年1月から10月現在まで82件の申し込みがあったとのことだ。四国・愛媛県公立園全24箇所申し込み、都13箇所、各県1〜3箇所ほどから申請があった。熊本は4ヶ所!
今年中に自己評価・利用者アンケートを済ませ、来年1月から調査者を派遣する予定とのこと。
以前、社会福祉協議会や民間のシンクタンクなどが第三者評価を実施するという考えがあったが今後どうなるのだろうか? 担当者によると「第三者評価事業を認証する機関を置く予定はないから、やるほうも自由である」とのこと。つまり、一定の基準を満たせば、どこだって実施できるよということらしい。
今後、国内各所で本システムをテーマとしたシンポジウムを開催し、みなさんの理解を促し、さらに多くの施設が評価を受けることができるよう進めてゆきたいとのこと。
受けたら、評価が来るのだけど、これは、三ツ星とか80点、90点という点数制で出てくるものではないようだ。 担当者も「点数付け、レート付けは今の段階では実施しない。総合評価は言葉で実施する。評価済み園については評価書を発行する」ということだ。評価者を発行してくれるということだから、考え方としてはISO9000とかのシステムに似ているのかもしれない。
受けたら結果を公表するというのが、このシステムの「掟」なのだ。で、どういう方法がいいのかというと、やっぱり、「i―子育てネット」を中心としたインターネットが推奨されている。こうなると園独自のホームページのたちあげも、近く考えなくてはならないのかもしれない。
さて、評価を受けるには20万円かかります。今回調べた限りでは、評価を依頼したとしても、損はしないと言えると思う。
しかけ人たちは「客観的」な評価ができるよう、さまざまな工夫をこらしているようだし、結果の出し方も公正なものだと思う。保育園のランク付けかと、心配する向きもあったが、そんなことはありそうにないようだ。評価の中には良いことだって、いっぱい出てくるはずだしね。
ただ、心配なのはスタートしたばかりなので、システムの骨格はしっかりしできたが、肉付けがまだ足りないということだ。細かい部分で、検討や修正が急がれる部分がまだまだたくさんある。さらに不安なのは、やはり調査者の資質だろうと思う。世の中には、変なやつがたくさんいることを、人一番知っている僕ら保育者は、変なやつが調査者だったら、いやですよね。 何しろこちらから調査者は選べないのだからね。調査者が信頼できる「好人物」でないと、はっきり言って申し込みたくない。
派遣機関は、事前に調査者3人のプロフィールとか、自己紹介状とか、事前の面談とかやってくれるのかなあ。
まあ、この辺は、当局が一番気をつかっている点でもあるのだが、、。
第三者評価は、受けて損はしないと思う。ただし、上のような問題がクリアーになるまで、つまりシステムとして落ち着くまで、受けるタイミングを見極めるのが、これなかなか「びみょ〜」なところだろうなあ。実際、評価に来た調査者と園にこんなトラブルがあったとか、そんな話も聞いておきたいし、なにしろ五里霧中の状況で決然と前に進むは、とても勇気がいりますよね。
それと結果公表の方法。インターネットはいいけど、いまだHPを持ってないところはどうする。自分で作るか、それとも専門業者に頼むか。頼むと金がかかるぞ。いずれにしろ、情報開示とHPは、もうすでにワンセットなんだなと思う。
今の段階で、おすすめなのは、評価基準が公表されていますから、とにかく園内研修とかで、自分の園の評価をやってみるということだと思う。宮崎大会の今回分科会の会場内からも、「園内研修の材料にしたらなかなか面白かった」なんて声が少なくなかったからです。
このシステム、なんとなく数年後には、「しなくちゃいけない」制度になりそうな気がする。建前はもちろん、自由意志ですよ。でも、来年は熊本から4件受けるとして、これが10〜20園と増えていったら、受けざるを得ない状況ですよ、もう。だから、早目に自分たちで練習を始めることが大事なのかもしれない。 はっきりしていることは、このシステムをうまく使えば、自分の園の「保育の質」を確実に向上させることができるということだ。システムをうまく使うかどうかは、みなさんの考え方次第だと思います。
第三者評価システムについて、宮崎大会の分科会で仕入れた情報をもとに構成してみました。情報が膨大で全てを網羅することはできませんでしたし、自分の理解が間違っているところが多々あると思います。でも、現在こういう様子であるというところはお伝えできたら幸いに思います。
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報告者:菊池みゆき保育園 副園長 福田俊彦