早いもので2月には臨時総会が開催され、現執行部の活動もいよいよ残りわずかとなる。臨時総会には、研修として講演会が計画されている。今回は「保育についてはなしをしよう」というテーマで千葉・和光保育園の鈴木先生を講師として招聘する予定である。そのため、森田・古川両部長と福嶋事務局が同保育園を訪問。さらに、ドライブスルー送迎等々ユニークな保育で有名な「せいがの森保育園」を訪れた。以下、その感想を今回上京されたみなさんに聞いた。
和光保育園にお邪魔したのは1月22日。品川始発、千葉方面へ向かうバスに1時間ほど乗り、そこからタクシー、運転手さんに和光保育園と告げるが、山また山でタクシーでさえ迷うような田舎である。ようやく和幸保育園に到着。
見ればびっくりのお縁とも言うべき廊下。 |
第2職員室とも言われている1教室分のスペースがあるトイレ |
「第一印象は、古き良き日本の家ですか(笑)。伝統的な家という感じで、園舎に幅5メートルほどの縁側があるのです。さらに、おやじの会が作った図書室やら喫茶ルーム、倉庫まである。もともとは、兵舎を移転したものだそうで、改築計画もあったらしいのですが、このままがいいという希望があり改築(大規模修繕)してそのまま使用しているとのことです」。
「おやじの会というお父さんたちだけのグループがあって、地域のおとうさんたちを保育園アクティビテイに取り込んでいるんですよ。ログハウスなんかも建築してしまうんだ(笑)。すごいと思います」。
「保育園が、地域の核として活動しているように思えました。子育て支援センターどころではなく地域の拠点といってよいと思います。図書館や喫茶ルーム(子ども服のリサイクルショップ&喫茶店)運営の維持管理を保護者と地域ボランティア(保護者)で行っている様子です。保育園の周りは田舎なのですが、高度経済成長で失われたコミュニティの再建が保育園のテーマだそうです」。
「保育園とは別に「わいがや亭」というのがあって、ここでは古着を販売しています。地域の母親が勤めていて、喫茶店もあり、夜までかかる会議などでは、地域からの利用もあるそうです(公共の施設は、21時までで閉められる)」。
「ともかく行事が多いようです。保護者が参加する回数も多く、隣の幼稚園とは逆とのことでした(笑)。頻繁に保護者が出入りしているけども、職員の休憩室だけは、他の人は入れないことになっているのだそうです」。
玄関の隣の調理室 |
「レイアウトフリー。キャスター式移動ロッカー。イベントがある場合は、荷物移動させるとのことです。乳児別棟は、少子化特例交付金にて建設したとのこと。寝るところ、食べるところ、生活する独立しているのはすごいと思いました。おふろも完備しているとのことです。どろんこあそびをするので、入り口にシャワー室(子ども用+大人用)を完備しています。」
長い時間保育園にいる子どもたちのためにも、余計な「キャラクターによるかざりものは、一切ありませんでした」。
ともかく広い。そして、とにかく保護者が積極的に保育園運営に参加している。福嶋事務局長より同園の通信文を見せてもらったがこれもびっくり。保護者で編集して発行するおたより「なっとう通信」が2002年12月で147号を重ねている。保護者の懇親会の議事録もきちんと整理して発行されている。これに対して園長のコメントもきちんと発行されている。保護者とのコミュケーションが本当に密なのである。
また、延長保育はしない。これは、やはり家庭で見ることが基本であり、ファミリーサポートサービスなどと連携することがベターとの考えからだ。さらに、キャラクターグッズの使用も一切廃止している。その理由もはっきりとおたよりで説明してある。
さらに具体的な情報がほしい方は、古川部長撮影のビデオがあるとのこと。ビデオの中での園長先生の語りが非常に興味深いとのことである。次回臨時総会では、同保育園・鈴木園長の講演会で、聞きたいことをがんがん聞いて欲しい。
翌日23日、一行は八王子市のせいがの森の保育園を訪問。園長先生は、当日ご不在(全私連の研修会の講師として関西に行かれている)とのことで副園長先生が、案内・説明してくれた。(森田部長の熱意によって実現した視察)
「とてもモダンな建物で驚きました。園長先生は、建築士とのことでなるほどと思いました。縦割り保育ではない「混合保育」を実施しているとのことでした。ここも和光保育園と同じく、食べる、寝る、遊ぶは広―フロアをパーティションや家具などで分けてありました」。
「ここも、地域の人が出入りできるように作ってあります。ミーティングルームを完備しており地域の人が利用できるようにしてあります。未満児だけだったと思いますが、受け取る門といいますか、場所がドライブスルーになっています。雨に濡れないよう、園舎の角を建設の時から通路として確保してある自動車の停車スペースで降ろして、保育士が受け取ります」。
「3歳以上児の食事は、セミバイキング(自分が食べられると思う量だけよそってもらう)。
セミバイキング方式の給食(園児の調理スペースとしても利用されている)+ 子どもの背中側にはガラス張りによって見下ろせる調理室がある |
食事だけに限らず子どもたちが自分たちで自己決定することができるように工夫してあります。配膳台では、当番の子どもたちが保育者と混じって配膳し、早く食べ終わった子は、違うスペースであそぶことができるようになってあります。つまり、各自が自分のペースで過ごす場所の保障をしている、個人の意志を尊重、一人一人の生活リズムを保障することを目標にしているとのことです。 それだけではなく、集団関係の人間関係を学ぶこと(社会性の育成)も主眼にしているとのことです」。
「太陽光発電、雨水ろ過装置もあり、災害時の緊急避難場所として活用できるよう作ってあるそうです。つまり、ライフラインを園で確保しているのです。 風力発電、ポンプ小屋(おがわのせせらぎをつくる・・・はやりの言葉で言うとビオトーフ)などもあるそうです」。
「園庭はとても広くて東京の保育園とは思えませんでした。」
「地域の人たちとの交わりをプロモートしていて、園庭開放してあります。玄関から下駄箱を素通りして園庭に抜けるウォークスルーにより、子どもとその家族だけでなくいろいろな地域の人が遊べるスペースになっています」。
「絵本の原画がパネルで掲示してあり、ギャラリーとして地域の人に開放してある。また、階段下にこたつがあり、そこで子どもたちが本を読むスペースがありました。また、自分たちで種まき、水やりなどを実施して植物の成長を経験する(小学校の生活科みたいな写真の記録の展示)とのことです」。
「和光保育園と同じく延長保育はなし、代わりにファミリーサポートを地域住民と連携してオーガナイズする予定とのことです」。
「まわりは新興住宅地=ニューファミリー地区です。近所づきあいが希薄になりがちなエリアです。子育てに限らず、地域の拠点として、保育園が多機能スペースを提供しています。保育スペースもオープン、間仕切り自由で、オープン性を強調しています。園の周りは住宅街で、現在も建設が進んでいました。その中で近所との共存にも気を配っているとのことでした。」また、両園とも、子どもたちに調理室がよく見えるよう作られていました。特にせいがの森は2Fから料理するところが覗けるようになっていた。」
視察に関する、私の所見で、両施設は一見全く違うようですが、保育園を「家」ととらえるところから保育がなされておりました。せいがの森は園長先生が設計士ということもあり、環境や地域への配慮とともに、一人一人の個性や個人差を尊重し、それぞれの生活リズムを保証するなど、限られた中にすべてを配慮した施設・保育内容だったと思います。
ただ気のせいか、子どもたちが視察慣れしているなあと感じました。また和光保育園は、まさに和光村という自然に抱かれた独特の感じを受けました。小高い山に囲まれ、お寺の境内と木造の園舎、「おやじの会」による手作りのいろいろなもの等、あいにくの雨でしたが、子どもも大人も癒される、魂の安らげる場所のような中に、地域の笑い声と元気な声がこだまするような気がしました。今回は本当に、実のある視察ができたと思います。
せいがの森保育園については、「保育Q&A:」というパンフレットが用意してあり、この中で同園の保育方針がクリアーに説明されている。こちらもいただいてきたので、興味のある向きは福田までメールを頂きたい。
園視察については、実際その場に行って、話しを聞く=体験するというのがベストだ。今回は、上の2園を訪れたみなさんからの聞き取りということになり、各園の状況が十分に伝わったとは思えない。しかしながら、福嶋事務長が開口一番「すごかったよ。両園とも、前向きに動いているという感じだった!」と興奮して語ったことから、和光、せいが森の取り組みの真摯さ深さを推察することができた。みなさんご苦労様でした。