top logo

第31回九州私立保育園研究大会

第1分科会
参加者数 264名
「今こそ、あるべき保育施策を考える」

コーディネーター・福岡市保育協会予算運営管理部長 篠原恵一氏
シンポジスト・鹿児島大学法科大学院教授 伊藤周平氏
弁護士 大井琢氏

第1分科会2人のシンポジストから、児童福祉法24条はくさびとなったと評価しつつ、しかしその地盤は軟弱である。介護保険法上のケアマネージャ―のような役割や権限を有するものが保育にはない。子ども・子育て支援法は地域型保育事業の基準の緩和により、同事業で行われる保育水準が大幅に低下し、子どもが利用できる施設や事業者によって大きな保育格差が生じるという問題がある等の提言があった。
参加者からは、施設整備費や保育時間の認定についてどう考えるべきか、保育所の良さをどうアピールしていくか、認定こども園にすべきか悩むところである等の質問があり、これに対して2人のシンポジスとからは、はしごを外すのは目に見えておりニンジンに食いつくのは危険であり、子どもの支援にたてば、そもそも事業によって基準を変えることはおかしい。メディアは、断片的な情報発信になりがちでなかなか本意が伝わらないので地道に訴えていくことを研修会等で情報の共有と運動の発展を図ることが必要との助言をいただいた。

 

第2分科会
参加者数 112名
「保育内容と子どもの姿」

助言者・東京家政大学家政学部児童学科教授 増田まゆみ氏
提案者・石峰保育所(北九州市)シオン保育園(熊本市)

エピソード記録を通して園内研修の充実をはかり、保育を見つめ直すことで一人ひとりに向き合う丁寧な保育で保育の質の向上を目指し、園で永い歴史をもつ保育実践(運動遊び表現遊び)の発表と、子どもの「食」を通した生活の中から見えてくる様々な問題を子ども達に投げかけ、食べる喜び・意欲へとつなげ、一人ひとりを受け止め個の問題を解決することはもちろん、集団として「人との関わり」「相手を思いやる心」への気づきへと発展させて子ども達の心の成長へとつなげる保育実践の発表があった。参加者からは、園内研修としてのエピソードの内容と運動遊びについて、「食」へのこだわり(食材・調味料・減農薬・食器等々)に対する具体的な取組みについての質疑応答があった。助言者からは「~をさせる」ではなく、子どもの主体性を大切にし、一人ひとりの子どもの思いを尊重し、受け止めていく保育を行うことが肝要であり、そのためには保育の原点を忘れず、常に振り返り続けることが求められると述べられた。また、それに関連して倉橋惣三先生の本を改めて読むことを勧められた。

 

第3分科会
参加者数103名
「子どもの創造性を育む自然遊び~子ども文化は美術文化~」

助言者・現代美術家 長谷光城氏
提案者・光輪保育園(熊本市)、かもと乳児保育園(熊本県)、大矢野あゆみ保育園(熊本県)、もぐし保育園(熊本県)、緑川保育園(熊本県)

子ども達の創造性を育む保育の実践をめざして、各年齢ごとに提案が出され、各県より活発な質疑が行われた。0.1歳児クラスでは、愛情を持って子ども達の行動を受け止めることが大切、2歳児クラスでは子ども同士のけんかや葛藤を見守りながら心のエネルギーを満たしていく、3歳児クラスでは、自然の遊びを通してじっくり関わり、一人ひとりの意欲を高める、4歳児クラスでは、けんかや人との関わりを通して仲間とのつながりの中で成長していくことが出来るように配慮する、5歳児クラスでは、友達の存在が重要になり、自然遊びの体験の中で自主性や自律性が育ち仲間とのつながりのなかで成長していくことができるように配慮するとの提案がされた。保育士のモチベーションの高め方という質問では、こどもたちが自然素材と遊ぶことで創造力が育つ姿を見て保育士自身喜び感動し、そして生きる力を見つけて欲しいという願いのもと活動しているという答えをいただいた。その他自然体験や絵について活発な質疑が行われた。

第4分科会
参加者数63名
「これからの病児・病後児保育の在り方」

助言者・NPO法人チャイルドケアサポート「みるく」理事長 杉野茂人氏
提案者・稗田保育園(宮崎県)、豊福保育園(熊本県)

病児・病後児保育の現状と問題点について発表され、保護者が安心して預けられる環境づくりや子ども達の体と心の休息がとれる空間づくりを心がけている中、「救急時対応の限界」「医療施設との連携」「保護者との連携」を問題点にあげられた。園併設型の場合どの基準で病後児保育利用を行っているかの質問があり38度以上の発熱で保護者に連絡、病院受診後保護者より直接病後児保育との連絡をとってもらうが、38度の熱にとらわれずその子の状態に合わせて余裕をもってほしいとの看護師の意見があった。その後8グループに分かれてのグループ討議が行われ、病後児保育を増やすための手段としては、現状を行政に訴えていくことが必要、保育所ではどの基準で保護者に連絡をいれているのか? 園では熱があったが、家庭に戻ると熱が下がるケースなど多くの保育士から発言があった。助言者からは、熱が出るのは何らかの原因があるからということ、また預けるうえで、親の判断ではなく必ず病院を受診していることは、最低限の条件だと助言いただいた。

第5分科会
参加者数176名
「子どもの気持ちを受け止める」

助言者・筑紫女学院大学人間科学部人間科学科人間形成専攻教授 牧野桂一氏
提案者・常楽寺保育園(熊本県)、花園保育所(沖縄県)

2園から「地区25園共同での思いやり保育について」とミュージック・ケアを保育に取り入れて」という発表があった。助言者より『子どもの気持ちを受け入れる』ために2園で実践されている取組みは、「保育者と保護者中心になってきている今の保育界に大きな警鐘である」と示唆された。後半は、発表者・助言者も加わり「思いやり保育の大切さ」「ミュージック・ケアについて」を軸にグループ討議が行われ、笑い声も聞かれる中活発な意見交換がなされた。
助言者からは、①認めてもらいたい(自分の所で見て止めて)②聴いて・相手をしてもらいたい(後でと言わない・今が大事)③待ってもらいたい(あわてない・あせらない・あきらめない)④成長したい・伸びたいと思っている(子どもの今を見る・知る・励ます)を柱とし、子どもの最善の利益を考え、子どもを真ん中にして、保護者や職員との信頼関係・連携を築きながら、その専門性を高めていかねばならないと、熱のこもった助言をいただいた。

第6分科会
参加者数100名
「電子メディアがもたらす乳幼児への影響」

助言者・国立病院機構九州医療センター小児科医長 NPO法人子どもとメディア代表理事 佐藤和夫氏
提案者・野芥保育園(福岡市)、ぬかみね保育園(熊本県)

田隈中学校区で取り組んだノーテレビデーにより生活リズムの改善がみられ、テレビやゲームに頼らない生活に変わっていったことの成果、また朝からイライラしたり朝食を食べてこない、コミュニケーション能力の低い子がみうけられたことによって保護者へ「メディアが子どもに及ぼす影響について」発信したが、反応があまりなかったため「子どもの生活・メディアに関するアンケート」を行い、フィードバックを行った結果、ノーメディアに関する保護者の意識向上(変化)があったことを報告された。保護者啓発の方法についての質疑があり、アンケートの結果をフィードバックしたり、人と場所を変えて繰り返し保護者に伝えることなどの応答があり、助言者からは近年のメディア視聴時間と体力・学力の相関関係、長時間視聴による悪影響、インターネットと携帯(スマホ)の問題を検討した結果、テレビ・ビデオ視聴の低減、ルール作りなどの提言をいただいた。

 

第7分科会
参加者数96名
「食で育つ力」

助言者・堅粕保育園園長 上里智紗子氏
提案者・宇島乳児保育園(福岡県)小林保育園(長崎県)

第7分科会提案2園の食育に対する取組みが説明された。その中で、好き嫌いのある子に対する取組み、アレルギーのある子どもに対する各園の対応方法、各園で使用されている食材と献立について説明された。また、子どもが生まれて初めて食べる離乳食から、すでに食育は始まっていることが強調された。五感を育て、子どものこころを育む保育こそが「食育につながっている」ことが確認された。食育は、手間と時間と「思いやり」であるという意見を中心に活発な質疑応答が行われた。助言者からは、参加園の調理スタッフ数は何人かとの質問があり、ほとんどの保育園が食育を十分に実践するには、少ないのではないかとの指摘があった。食育の重要性から見て、調整スタッフ数は増やすべきであり、上方修正が参加者からも強く求められた。さらに、助言者から、食と健康の密接な関わり合いについて、独自の視点から多くの発言・説明があり、参加者にとって小郁についての大きな啓発となった。

 

特別分科会
参加者 Aコース27名 Bコース24名 Cコース14名

広大な保育園を視察し、工場見学をして熊本の自然、水を感じてもらう・菊池渓谷で紅葉を見て、乳児保育園の視察をする・熊本の歴史、文化、自然に触れてもらうといったテーマをもとに3つのコースに分かれて視察研修を行った。
それぞれに今の熊本、昔からの熊本を目と肌で感じてもらったが、日頃の忙しさを忘れるように、色づき始めた木々と清流に癒され、熊本の水を使ったビールや清酒の試飲のおまけに気分も向上、「おいしい熊本の水」を認識していただき、保育園の視察では新たな視点・発見を得て短い時間ながらも「熊本」を満足して頂くことが出来た。